同性婚訴訟判決文記録—札幌地裁令和3年3月17日—

記録用に残しておきます。
判決文は難解ですが重要箇所に下線部をひきつつ、なるべく噛み砕いて記そうと思います。
読解がキツイと感じた方は、下線部だけ読んでみてください。

判決文の全文はコチラからどうぞ→PDFファイル

まず、はじめにツイッターで「金取るから応援できない」との書き込みを見かけましたが、
日本は付随的違憲審査制を採用しているので、具体的な争訟事件がないと憲法判断をしてくれません。
ドイツみたいな憲法裁判所をもつ抽象的違憲審査制ではありません。
訴額は1人あたり100万円だったそうですが、長期間にわたる訴訟行為(地裁判決まで2年)は
大きな負担で、100万はむしろ割に合わない金額だと思います。

あと、国側の弁護士は『同性婚が憲法24条に反する』との主張をしていません
法の専門家として同性婚の違憲論は苦しいとわかっていたのだと思われます。
当事者が主張していない事項を裁判官は判断できないのですが、
判決理由で憲法24条は同性カップルに対する一切の法的保護を否定する理由にならないと触れています
また、先月の2月26日で衆議院法制局ではこのように述べています。

憲法24条1項と同性婚の関係については、論理的にいくつかの解釈が成り立ち得ると考えますが、結論から申しますと、少なくとも日本国憲法は同性婚を法制化することを禁止はしていない、すなわち認めているとの『許容説』は、十分に成り立ち得ると考えております。

ハフポストに詳細が載っています。

では、主文からです。

負けちゃいました(;´・ω・)
望みは賭けていましたが、概して予想通りです。
ですが、本件は原告側の実質的勝訴といわれています。

憲法24条1項『婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。』
婚姻に関する条項。『両性』の文言については、別記事に詳しく書きましたので、
お時間のある方はぜひ読んでください。

同性婚は憲法24条に違反するか
法律関係者ではないが、かつて法学をかじった身としての私見。 なるべくわかりやすく、かつ専門的なことを書こうと思う。 (1万字以上あるので、読了はお時間のあるときをお勧めします) ◆条文 憲法24条1項 『婚姻は、両性の合意のみ...

憲法13条『すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。』
幸福追求権を定める基本的人権の包括条項。

憲法14条1項『すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。』
法の下の平等。今回は14条について、立法裁量を超えた部分について違憲判断が下されました。
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つづいて、裁判所が認定した事実の概要です。

①性的指向は本人の意思によって選択・変更し得るものではないと判断しました。
②明治民法においても婚姻の目的は夫婦の共同生活を送ることにあり、
必ずしも子を残すことのみが目的ではないと考えられていた』と示しました。
婚姻の目的が子孫繁栄か否かは同性婚論議に大きな影響を与えますが、
旧民法下であっても子を残すことだけが婚姻の目的ではなかったと明言しました。
③戦後の昭和22年(1947年)の民法改正時では、婚姻とは男女の精神的・肉体的結合を指し、
同性婚は当然に認められないものだったとしています。
④同性愛が精神疾患から外されるなど諸外国の変化を述べた後、
平成27年(2015年)以降、国内で登録パートナーシップ制度が広がった事実を考慮しています。
⑤同性婚又はそれに準ずる制度に肯定的なものが『おおむね半数程度』と認定。
⑥しかし、60歳以上の世代は否定的な回答が多いと認定。

次に、違憲性の判断です。

(1)が24条、(2)が13条についてです。
①婚姻の自由(自由権)は24条1項の趣旨に照らして十分尊重に値するとしました。
→大雑把ですが、保障の程度は『保障される>十分尊重に値する>尊重されるべき』。
婚姻の自由は十分に具体的な権利とまではいかないようです。
②『両性』の文言は男女を想起させる文言であり、
同条は異性婚の定めで同性婚は射程範囲外にあると示しました文理解釈を重視した形です。
私見になりますが、『両性』の発端となるマッカーサー草案の内容に言及し、
条文の趣旨に立ち返った論理解釈を期待していました。
また、憲法制定当時ではなく、裁判時(現在時)の社会通念を基準に、
異性間に適用されるものをなぜ同性間に類推適用できなかったのかについても触れて欲しかったです。
③憲法24条2項では、婚姻や家族に関する事項は個人の尊厳や両性の本質的平等に立脚して、
制定されなければならないとしてます。
『国会の合理的な立法裁量に委ねる』として立法裁量論に落とし込みました。
立法には複雑な事情が絡み、三権分立の観点から司法がその干渉を防ぐことはよくあることです。
憲法13条のみを根拠に同性婚など特定の制度を求める権利が保障されているのは困難と判断しました。
性的指向に関する人格権や自己決定権に触れることはせず、
婚姻の自由という個人の基本的人権より、制度設計者側の広汎な裁量を優先した形です。
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憲法24条と13条の解釈から、立法府には広範な立法裁量を有するとして、
憲法14条の解釈にはいります。

国側が主張していた内容です。
同性愛者も現行法上の婚姻はできるので平等原則に反しないと主張しましたが、
札幌地裁では『憲法24条や現在の婚姻制度が予定している婚姻とは解し難い』と疑義を呈しています。

①同性婚の話では、ときおり婚姻制度そのものをなくせとの声があがりますが、
裁判所は婚姻にかかる法的利益の重要性を認定しています。
②同性愛者と異性愛者が等しく、婚姻によって生じる法的効果を得られるべきとしています。

現行の婚姻制度は『子の有無にかかわらず夫婦の共同生活自体の保護』も重要な目的だと明言。
②先ほど、24条は異性婚を対象とするとしましたが、『憲法24条は、同性愛者のカップルに対する
一切の法的保護を否定する理由』とはならないと明言しました。
ネットでは以前として両性の文言から憲法は同性婚を禁じているとのコメントが散見されますが、
少なくとも当判決においては24条がその合法化の障壁にはならないとしています。

①同性カップルが婚姻によって生じる法的効果を享受する利益を受けられないのは、
同性愛者の保護が異性愛者と比して著しく欠けているとしています。
②前段落では、とくに60代以上の高齢者層で同性婚に否定的な意見を持つ国民が多いと指摘し、
そのような国民がいることは立法裁量のなかに斟酌できる事情としていました。
そのうえで、14条違反の判断では限定的に斟酌されるべきと示しています。

少し長いですが、区切りながら書いていきます。
前段落では同性間の婚姻や家族に関する制度は立法府の広範な立法裁量によるとありました。
そのうえで、
①性的指向は人の意思によって選択・変更できない。
性的指向の違いで得られる法的利益に差を設けてはならない。
②同性愛者は現に婚姻によって生じる法的効果の一部すら提供されていない。
③同性愛者と異性愛者の区別を解消すべき社会的要請の考慮。
④同性婚に対する否定的意見や価値観をもつ国民がいる点については、
14条の違憲性を検討する場面においては限定的に考えるべき。
以上を理由に、同性愛者が婚姻によって生じる法的効果の一部すら享受できないことは、
立法府の裁量権の範囲を超えたものであるといわざるを得えない』。
→婚姻によって生じる法的効果を享受する法的手段として、
それが婚姻という形であれパートナーシップ制度という形であれ、
同性愛者に何もない提供されていない点が問題視されています。
1件目の地裁判決なので確定はしていませんが、
いきなり裁量逸脱の認定がくるとは正直驚きました。
最初の1歩としては大きな功績だと思います。
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最後に、憲法14条違反が認定されたのに、なぜ国家賠償請求が認められなかったかについてです。

①日本でパートナーシップ制度の広がりがみられたのは2015年10月以降で諸外国と比べて遅い。
②60歳以上の比較的高齢者に否定的な意見が多数あり、
国民意識として同性婚に肯定的になったのは比較的最近のことである。
③国会において議論されるようになったのも2015年に至ってからのこと。
④今回が初の司法判断であったこと。
以上から、『国会が14条違反を直ちに認識することは容易ではなかった』ので違法性がない→請求棄却
選挙前はLGBTQについて散々やると明言していたのに、選挙後に音沙汰がなくなりもしましたが…。

形式的には被告が勝訴したので、国側は控訴することができません。
原告が控訴をしなければ、本判決が確定することになります。
地裁の説明によれば、期間が経過すればするほど放任の違法性は高まります。
タイマーは動き始めたのです。

■追記■
原告は札幌高裁に控訴する方針だそうです。

政府の対応がありました。以下、朝日新聞からの引用です。

加藤勝信官房長官は17日の記者会見で「婚姻に関する民法の規定が憲法に反するものとは考えていない」と述べた。「この点に関する国の主張が受け入れられなかった」とした。
・札幌地裁の判決を受けた法改正などの政府の対応について、加藤氏は「他の裁判所に継続中の同種訴訟の判断をまずは注視していきたい」と述べるにとどめた。

同性婚法制化の道は長そうです。
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