現地レポート世界LGBT事情を読む3(中東のゲイバー)

ヨルダンの首都アンマンの中心部にある「ブックス@カフェ」。この辺りは、不景気になって地価が下がってしまったけれど、アーティストが移り住み、ギャラリーや映画館ができて・・・ゲイもやってきたというわけ。いわゆる、ジェントリフィケーションってやつで、街全体がブルジョワ化していったのさ。

アメリカから一転、舞台はアンマンへ
ヨルダンは西にイスラエル、東にサウジアラビア、北にシリアと何かと複雑な国で、中東戦争の勃発によりヨルダン川西岸に住んでいた多くのパレスチナ人が、難民としてアンマンに流れ込みました。難民たちの多くは現地の人々と共生せず、仲間同士で独自のコミュニティを築き、生活の基盤を確立していったそうです。そのなかで起きたジェントリフィケーション。ジェントリフィケーションとはスラブ街のような貧困層が住むエリアに、何かしらの原因で中流・上流階級の人々が流入したことで、都市が再開発される現象です。都市化によりご近所付き合いが乏しくなった場所は同性愛者にとっては雲隠れしやすく、出会いの場やゲイライフの選択肢も豊富となり何かと生きやすい環境となります。

中東ヨルダンでゲイバーを営むマディアンはパレスチナ人。ベドウィン(砂漠に住むアラブの遊牧民族)の末裔である彼の一族はもともとイスラエル北部のアッカ出身で、両親がヨルダン川西岸地区ジェニンに移住すると、イスラエル軍に占領されてしまいました。その後、両親はクウェートまで逃れ、マディアンを出産。マディアンはアメリカへ留学し、オクラハマ州立大学で建築学を履修、カリフォルニアで暮らしたあと東海岸へ。ニューヨークでアラブ風ゲイバーをオープン。その10年後に、ムスリムの街(アンマン)でアメリカ風ゲイバー「ブックス@カフェ」をオープンする。

中東ならではの複雑な事情がみられますが、海外へ留学できたということはマディアンは比較的裕福な身分だったのかもしれません。クウェートにはオイルマネーがあり、サウジアラビアと同様に外国人労働者の多い国で、余所者であってもアラブ人であれば肩身が狭くなることはなさそうです。また、ベドウィン族はもともとクウェートにいた民族だそうで、何かしらのツテがあったのかもしれません。
オクラハマ州は南中部で共和党支持者の多いレッドステート。西海岸と東海岸は民主党支持者の多い、米国有数のリベラルなブルーステート。マディアンがアンマンにゲイバーを開いたルーツも、このような多様なアメリカの風に吹かれたからなのでしょうね。中東にゲイの社交場を作るのは危険で普通はやらない((( ;゚д゚))

 トルコなどムスリムの多い中東では男による男へのナンパ話を聞きますが、同時に戒律で禁止される同性愛には厳しい社会意識が根付いており、身内に同性愛者がいるとわかれば血相を変えて息子・娘に刃物を向け、家から追い出す親族もいると聞きます。この矛盾を追って調べてみると、トルコの男は性欲の強い肉食系が目立ち、男から男だけではなく、当然、男から女へのナンパも多いそうです(;^ω^)
 ただ、戒律では家族を大切にすべしとの教えがあり、家族の健全な形成過程に悪影響があるとされる”男女の婚前交渉”に強い拒絶感を持つことから、敬虔な信者であるほど女性との握手さえ拒む人が少なくないそうです。その一方で、同じく戒律で禁止されるはずの同性愛に手を出す者がいるのは、同性愛は『家族の範囲外』というアングラ的な思想の観点から、心理的に手を出しやすい感じがします。中東諸国が西欧諸国のLGBT運動を警戒するのは、こうした同性愛にまつわる二重の基準が関係しているのかもしれません。表沙汰にされるとバッシングを受けてしまいますからね。
また、男へのナンパはトルコの都市部のなかでも観光地がメインで、それ以外はやはり保守的な地域が多いようです。なぜ都市部が集中的に狙われるかというと『外国人が多いから』。一時的な滞在者である外国人との間ではアッラーの教えも無効となる!と、これまたダブルスタンダードに考える節もあります。とりわけ日本人はヒゲがなく華奢で幼い容貌なので、なおさらちょうど良いお相手として選抜されているのかもしれません(=゚ω゚=;)
いずれにせよ、お上も同性愛の存在を把握しているはずですから、雑多な社会に茫然とまみれてる範囲内であれば黙認という形をとっており、ゲイの社交場やイベント、ゲイの権利運動をあからさまな形でやってしまうと危うくなると思われます。

アンマンのジャバル・エル・フセイン難民キャンプで暮らすモハマドという若者はコカ・コーラを飲まず、ケチャップも使わない。(イスラエルとアメリカの製品をボイコットしている)彼は常に財布に入れて持ち歩いているチェ・ゲバラの写真を私に見せ、自分もパレスティナ開放人民戦線(PELF)のメンバーだと言う。

反米ですね。PELFはパレスティナの武装組織で、欧米やイスラエルからはテロ組織として認定されています。部外者の自分は何ともやるせない気分・・。
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カフェの中は無国籍地帯というか、領土も国境も関係ない世界なんだ。ここはヨルダンだけど、中東のどこか別の国でもおかしくない。店に来るのはみな「故郷」を追われた人たちなんだから。そして、ベイルート(レバノンの首都)やドバイそしてイスタンブールを夢見てる。だけど、本当に行きたいのはアメリカなのさ。

コーラのボイコットで意思を表明する者がいる一方で、中東の本音を垣間見てしまった気分。中東にも多様な思想が混在する証ですね。

本当のところ、アンマンではヘテロでいるよりもゲイでいるほうがずっと気楽なんだよ。ゲイは比較的簡単にパートナーを見つけることができるけど、異性のデート相手を見つけるのはほとんど不可能だから。

異性愛は”表の世界”。しばし女性は不用意な外出を控えるよう、チェックされることもあるそうです。
一方で、同性愛は”裏の世界”。同性愛がアングラの範囲内だからこそ、戒律で縛られる生活空間ではかえって居心地が良いのかもしれません。

まったくゲイフレンドリーではないヨルダンのハーシム家が、なぜこの目立つカフェ(ブックス@カフェ)を黙認しているのだろうか?

オーナーのマディアンには、国王アブドゥラ2世の反イスラム・恩顧主義的政治体制に強い人脈があり、彼と同じくクウェート生まれのパレスティナ人であるラーニヤ王妃と親しいからと言われています。また、前国王フセイン1世の妃でゲイ・アーティストの支援者でも知られる、米国生まれのヌール妃とも親密な関係にあり、さらに、マディアンの弟はヨルダンで人気を博しているワイドショーの司会者を務め、メディアとの繋がりがブックス@カフェを守っているのだとか・・・。
やはり、マディアンは只者ではなかったですね(;’∀’)
幾重もの防波堤に守られていないと、こんなことできないですわ。

当然のことながら、砂漠のオアシスのようなこの店は特別警戒の対象である。アラブの大富豪や王家の血を引く若い王子たちの同行は警察が常に監視している。夜間、カフェ前の通りで見回りをする私服警官を何人も見た。彼らはカフェから出てくる未成年客を補導したり、売春婦を逮捕したり、ラマダン期間中の飲酒を厳しく取り締まったりする。

マディアン曰く、一線を越えない限りは当局から干渉を受けないそうです。だから、客同士が大っぴらに抱きつきあったりしないよう、彼なりに客の態度には常に目を光らせており、ゲイプライドの運動をするつもりもないそうです。
また、マディアンは顧客の対象をゲイに限定せず、酒類を楽しみにしている富裕層や権力者まで広げました。
支配者層と懇意な関係にあるだけではなく、客としても味方につけることで店と自分の命を守ってきたわけですね。外側からは一般的なバーのように見せかけ、奥の方はゲイオンリーにするなど間取りの棲み分けもバッチリ
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2016年、再びアンマンを訪問した私(筆者)は、ブックス@カフェでマディアンと再開する。店の雰囲気はさほど変わっていないが、オーナーのマディアンは以前よりも用心深くなっているのを感じた。ヨルダンに流入するシリア難民の数はかなり多い。テロによる襲撃事件も増加し、ゲイバーのような場所もホモフォビア(同性愛嫌悪)やイスラム原理主義者の攻撃対象になりかねないからか。

以前はゲイプライド運動をするつもりがないと言っていたマディアンですが、2016年になってカフェにレインボーフラッグを掲げるようになったそうです。ISやシリア難民など、いろいろありましたからね。政情不安のなかレインボーフラッグを掲げてしまったら、当局から睨みつけられて余計に危ういと思うのですが、不安な状況だからこそ己の主張を通したいのかもしれません。彼の店が存続することを祈ります。

世界各地にはそれぞれ独自のLGBTコミュニティが存在し、その多様性は無限だ。たとえば、シカゴの西部劇スタイルのバーでカウボーイの衣装を着たゲイが踊るラインダンス、ブエノスアイレスならゲイ・タンゴナイト、リオならばゲイ・サンバナイトとなる。シンガポールではゲイチームがドラゴンボートレースに参加する。キューバにはゲイ専用のアビタシオンというアパートがあり、東京にはゲイのカラオケ「スナック」さらにラブホテルまである。

はじめて「東京」を発見!と思いきや、扱いがちっさ(´Д⊂)
スナックというか世界中に点在するゲイバーと同じ構造だと思うけど。。
男性同士お泊まり可のラブホも二丁目にはありますが、それ以外は表向きに同性同士の入店を認めている場所は限定的で、去年の秋、大阪の方で男性同士の宿泊を拒否したラブホに大阪府から是正勧告を出ました。
「男性カップルの宿泊拒否、大阪府がラブホテルに行政指導」産経WEST

ネットでは、ゲイは肛門性交をして不衛生だから、清掃の負担を考慮して宿泊拒否をするのは正当であるとの意見が多かったです。
全てのゲイが肛門性交するわけではないし、肛門性交をする当事者はベッドを汚さないように段取りを踏まえる方が多いように思えるのですが・・なかには大人になってもだらしのないゲイがいるのも確かなので、ここらへんは当事者側がふしだらな身内を糾弾して減らしていくしかないかと。

-おまけー
文章にでてきた水タバコって何ぞ?
オシャレ.。゚+.(・∀・)゚+.゚
花などのフレーバーが付いているタバコを熱し、水を通して吸い込むのだとか。
携帯が難しいので、皆で共有しながら嗜むのでしょうね(*´ω`*)y-00

次回はアメリカのニューヨーク編へ
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青空ジャンク

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